珍事

犬が膝に乗った。
恋人の。


だからどーしたというなかれ!
うちの犬というのはもともと長いこと外犬で,人間とのスキンシップといえば
 ・散歩
 ・お手。おかわり。両手。
 ・仰向けでごろーん
くらいしかできなかった。
上に揚げたのの後ろふたつは恋人と一緒に暮らすようになってから習得した技術だ。(技術?)


だったのに。
だったのに!
それは昨日のこと。
帰宅した恋人が座椅子に座って深いため息をついた。
それをわたしの足元まるまっていた犬が見るともなしに見ると,とてとてとてと恋人に近づき,なんのてらいもなく「よっこらせ」とその膝(というか腿だな)に座ったのだ。
犬の顔の位置は恋人の顔と同じくらいの高さになった。
そのまま,「ふぐう」と息を吐き,どこか満足げな顔。


あまりのできごとにしばしわたしと恋人は硬直し,次の瞬間
「し,写真撮る?」
「いや,つーか,もう!」
大騒ぎになった。


夜も夜,あと1時間で日付も変わろうとする時間に大騒ぎするほどのことじゃないんだけども。
わかってるんだけども。
いやでもほんと,首をかしげて「ばうう?」と云ったとき以来のヒットだった。
だってかわいいんだも。