随筆/読了

記憶の小瓶
高楼 方子

クレヨンハウス 2004-09
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「人の幼少期の話は,自分の幼少期の記憶を呼び覚まします。この私的な回顧話に意味があるとすれば,その一点に尽きるでしょう」


そんな書き出しで始まるのだけれど,面白かった。
意味なんてどうでもいい。面白かった。
思い出が,というよりも,すべてはその明晰な文章にあったんだと思う。
媚びず,酔いしれず,つっけんどんにもならず。
結びまでしっかり,姿勢の正しい文章だった。
甘いのに後味がさっぱりしていて,次から次に欲しくなる魅力的なお菓子のようだった。

小説/読了

螢坂
北森 鴻

講談社 2004-09-22
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不調はいつだって突然やってくる。
巧妙に隠された落とし穴にはまり込むようにすとん,と落ちた。
やたらと心弱くなって,顔に当る風にすら眉を顰める始末。
顰めたって風は当る。無駄なのに,わかってるのに。


電車の中で開いた本はひとの死なないミステリだった。
死なない,というか殺されない。
そして十分に切なくて。
途中で閉じるのが惜しくて寄り道までした。
その頃には沈み込んだ気持ちも「おなかへった…」と情けない顔をするくらいまで復調。
ひとが死ななくて切ないだけじゃなくておいしそうな料理がたくさん出てくる本だった。