小説/読了
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新刊売場でぴたりと足が止まった。
山田詠美さんの新刊だー！
大仰なあおり文句のポップが立ち，帯の惹句は「「新たな恋愛小説」が生まれた！」だって。
少々胡散臭くもあるけれども，もっとも信用の置ける作家の山田さん。
懐かしい甘さを感じるような装丁にも惹かれて手に取った。
数ページ捲って，レジスタへ向かう。
「あーもうだめだよこんなの観ちゃったら。これ買わずにでられたらわたしはわたしじゃない別のひとだ」
ひとりごつともなく呟いたのはそんなこと。
身体を使う男のひとが主人公の短編集。
どれもこれもすごくよい風味がする。甘いのに苦い。だけれどもやっぱり後味は甘い。
ずぶずぶと沈みこむような心地で読み上げた。
閉じた後には満足のため息。
給料日前？ そんなの知ったことか!!
少しだけ勇ましくなって家まで歩いた。
知ったことか，じゃ済まされないんだけどね…。
